本日ここに、御遺族はじめ多くの県民の皆様の御列席の下、鳥取県原爆死没者追悼・平和祈念式典が執り行われるに当たり、70年前の原爆で亡くなられた御霊に対し、謹んで追悼のことばを申し上げます。
昭和20年8月、太平洋戦争の末に広島と長崎に投下された原子爆弾によって、あの「ピカドン」の一撃で幼子からお年寄りまで数多くの罪なき人々の命が奪われ、自然災害ではなく人間が自らの手で引き起こした人類史上未曾有の災禍として、世界中の人々の記憶に刻み込まれました。被爆者、御遺族の皆様が、尊い命、かけがえのない身体、そして崇高な心に、取り返しのつかない深い損失と傷を負われることとなりましたのは、まさに痛恨の極みであります。
鳥取県におきましても、昨年度29名の被爆者がお亡くなりになり、死没者は実に1,062名を数えました。亡くなられた方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げますとともに、今なお後遺症等に苦しんでおられる被爆者、そして深い悲しみの中におられる御遺族に、心よりお見舞いを申し上げます。
戦後、我が国は、一人ひとりのたゆまぬ努力により、平和を守り、今日の豊かな鳥取県づくりを実現してまいりました。この繁栄の礎には、先の大戦における多くの尊い犠牲があることを、決して忘れてはなりません。
あれから70年という歳月を重ねました。残念ながら、今もって世界平和と核兵器廃絶の願いが完全に成就されているとは言えません。原子爆弾の凄絶な地獄絵図の悲劇を経験した私たちは、核兵器の使用が放棄された世界、堅く平和の絆が結ばれた世界を強く希求するものであります。
被爆体験を次の世代へ、その次の世代へとしっかり継承し、国際平和への貢献と核兵器廃絶、そしてふるさと鳥取県の発展に、一層の力を捧げてまいりますことを、被爆70年に当たり、県民とともにお誓い申し上げます。
結びに、謹んで御霊の安らかな御冥福をお祈り申し上げますとともに、被爆者、御遺族、御列席の皆様方のいやさかを祈念申し上げ、追悼のことばといたします。