平井通信

寄稿分
雨にも負けずコロナにも負けず
鳥取県知事 平井伸治

豪雨までもが「新しい日常」?
新型コロナウィルスの猛威がやまない。わが国でも連日全国で新規感染者が報告され、重症化により命を落とされる方が絶えないなど、国をあげての封じ込めや医療体制整備が急がれる。ウィルスと共存する「新しい日常」への適応が必要となる。
最近の異常気象も毎年のように繰り返され、線状降水帯や梅雨前線・台風によりもたらされる雨量たるや、経験値を超越することも珍しくなくなった。異常気象が「日常気象」になり、避難実行やダムの管理まで含め、こちらも「新しい日常」が急務だ。

甚大化する自然災害と鳥取県の対策
鳥取県では、平成19年8月22日に若桜町・八頭町で、続く9月4日に琴浦町・大山町で、局地的な集中豪雨が発生し、琴浦町八幡では時間雨量103mmを記録するなど、強烈な雨で被災箇所が相次いだ。この経験が出発点となり、記録的短時間大雨情報等の発表時は即座にリエゾン職員を県から市町村へ派遣することし、避難所への避難以外にも2階への垂直避難を検討するなど、急激な降水による溢水・土砂災害への備えを強化することとし、年々これを強化してきた。
平成30年7月には西日本豪雨に襲われ、県内初の「大雨特別警報」が発表され、総雨量が500oを超える記録的な豪雨となり、智頭町をはじめ各所で河川護岸崩壊や土砂崩れが発生した。更にこの年は、台風24号でも琴浦町などで甚大な被害を被り、公共土木被害額が過去最高レベルに達することとなった。
特別警報発表とともに、市町村と緊急テレビ会議を行い、直ちに土木技師等を町役場へ予め送り込んだが、その後道路等が不通となり早めの対応が功を奏した。また西日本豪雨の全国各地での被害状況に鑑み、鳥取県独自にダムの利水分も含めて事前放流を行う協定を締結したり、河川等へのカメラ設置や住民避難対策の策定にとりかかった。

令和元年東日本台風を教訓として
昨年10月の令和元年東日本台風(台風19号)は、東日本や中部地方で大規模な河川氾濫等により死者・行方不明者百名超の甚大な被害をもたらした。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げる。鳥取県は、長野県などに対する災害支援に奔走した。
本県では、この台風災害を教訓に、「一人の犠牲者も出さない」ことを目標に、国の検討を待つことなく、11月には有識者・関係行政機関で構成する「鳥取県水防対策検討会」(ハード対策)と「鳥取県防災避難対策検討会」(ソフト対策)を設置し、検討を重ねて本県独自の水防対策にとりかかった。
具体的には、鳥取県内でも治水能力を超える豪雨が発生することを前提に、治水施設機能向上により洪水氾濫の軽減・遅延を図りつつ、水防活動、情報発信、安全避難実現等のソフト対策を流域全体で展開することとした。
直ちに、堤防強化対策(堤防舗装等)、バックウォーター対策(樹木伐採・河道掘削の重点化)、河川情報の発信強化(河川監視カメラ等)、ダム放流安全避難対策等を進め、中長期的には河川整備計画を推進し流域貯留施設検討等を行う。住民主体で避難基準を作成する避難スイッチについても、地域で議論を始めている。

おわりに
本年7月には球磨川が氾濫するなど、未曾有の豪雨は再び列島に牙をむいた。本県も早速、バックウォーター想定箇所で水没も考え得る社会福祉施設について、緊急点検を行って避難誘導対策を練っている。
雨にも負けずコロナにも負けず。
気の抜けない闘いが続く。

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