加速度1494ガルが襲った鳥取県中部地震
昨年10月21日午後2時7分、震度6弱の鳥取県中部地震が本県を襲った。熊本地震と同じ前震・本震型で、午後0時12分の前震に続く本震だったが、揺れの加速度は1494ガルに達し、阪神淡路大震災の818ガル、熊本地震の本震1362ガルを上回る激烈なものとなった。しかし、その周期はキラーパルスと言われる1〜2秒よりも短い0.4秒の揺れが中心であった。
このため加速度に比し家屋倒壊は比較的抑えられたものの、他方、揺れ自体は強かったことから、倉吉市、北栄町はじめ県中部を中心に負傷者25名の人的被害のほか住宅被害が幅広く発生し、全半壊330棟、一部損壊15,037棟にも上り、大規模建築でも倉吉市の市庁舎や給食センター、県立のランドマークである倉吉未来中心など、甚大な被害がもたらされた。
一部損壊への支援拡大
上記の地震メカニズム判明前、発災直後から被災地を精力的に回り被災状況を分析してみると、住家は軒並みダメージを受けているのに対し、なぜか倒壊家屋は少なめであることが判ってきた。半壊以上を対象とした従来の住宅復興支援では、被災者を救えないことになる。
そこで発災3日後に市町村長と協議し、今回の地震被害の特徴に即し、思い切って一部損壊についても全国で初めて支援対象とすると決定。一部損壊でも損壊率10%以上は県・市町村共同事業で30万円以下、10%未満は原則5万円の県助成を実施することとなった。
熊本地震等の経験では、半壊以上か一部損壊かを分ける損壊率20%を境に公的支援が皆無となるため、罹災証明の二次判定を求める件数が多数に上る実情に被災自治体は忙殺されてきたが、本県では一部損壊も助成対象としたため二次判定申請は少数に止まった。
実態に即した耐震化と「支え愛」による災害対策
この度の震災を教訓として、本県では防災・危機管理基本条例を改正し、安心のふるさとづくりのステージアップに舵を切った。
建築については、鳥取県耐震改修促進計画を改訂し、瓦屋根の耐震化ガイドライン導入も含め住宅や建物の耐震化を図る。そして地震を契機に、耐震化補助対象を屋根や非構造部材等にも拡大したほか、家全体の耐震改修は多額の費用を要するため、家の一部の耐震シェルター化も助成するなど、現実に即した制度拡充を行うこととした。このほかにも、耐震講習会、低コスト耐震改修工法の普及、耐震技術を持った業者の「木造住宅耐震化業者登録制度」創設など、様々な対策を進めている。
本県では地震や大雪に際し自発的な支え合い活動が各地で活発に行われた。これを災害対策で活かしていこう。新改正防災条例に「災害時支え愛活動」の推進を盛り込み、お年寄りなど避難に配慮が必要な方の情報を地域で共有する「支え愛マップ」の作成を進めるなど、本県の絆を生かした災害対策の展開に乗り出した。
「復興」、そして「福興」へ
現在、鳥取県では官民一体となった復興会議を立ち上げ、地域一丸となった復興を進めている。その際マイナスをゼロに戻す復興のみならず、さらにプラスにする「福」を興す「福興」を実現することを目指している。
災害対策の起点は現場の被災の実情にある。政府としても、住宅復旧支援の一部損壊への拡充や、資金に乏しくても実行可能な耐震改修の推進など、現実に向き合った対策を考えるべきだ。
地震国と言われる日本。それでも私たちはここで生き抜く。かけがえのないふるさとだ。
鳥取から安心のモデルを起こしていく。